第4回:生活支援情報を検索する

はじめに

新型コロナウイルス感染症のまん延や、それに伴う国や自治体からの経済活動自粛要請により、全国民の生活や経済活動に大きな影響が出ています。そのようなときこそ、法律や予算措置に基づく国の支援情報を逃さないことが重要です。今回は、国の発信する支援情報を収集するための検索方法に焦点を当ててお話をしていきたいと思います。

 

新型感染症と自然災害の支援情報の違い

自然災害がおきた場合の被災者支援や復興支援であれば、すでに過去の災害を教訓とした法制度が整備されており、パンフレットや書籍などのによって事前に支援情報を学ぶことができます。たとえば内閣府(防災担当)作成のパンフレット「被災者支援に関する各種制度の概要」には、災害時に利用できる法制度が網羅的に記述されています。拙著『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』も、法整備が進み情報の蓄積もすすんだ災害分野であるからこそ、災害の前に読んでもらえる防災の本として作ることができたのです。

しかし、本連載でこれまで指摘してきたように、新型コロナウイルス感染症は「災害」ではないという建付けで国の支援が実施されてきています。そして今後も、これまでにない新しい施策が法改正や予算措置によって随時追加されていくことでしょう。したがって、決定版的な書籍等で支援策をまとめて効率的に学習することも現時点では難しく、信頼できる情報のありかを知っておくことが重要になってくるはずです。

 

使いやすいポータルサイトを活用する

まずは、支援制度を所管する国の省庁が用意しているポータルサイト(あるいは同様の役割をしている特設ページ)を活用することが欠かせません。感染症対策といえば、医療関係を所管する厚生労働省が国の担当部署のように思えますが、「支援」に着目すると、国民一人ひとりの関わっている分野やニーズ、事業者の関係する業界等に応じて、すべての省庁が何らかの支援策や情報発信を行っています。

したがって、収集したい情報や目的が比較的はっきりしている場合は、関連省庁のウェブサイトをチェックすることが正確な情報を最も早く入手できる経路になるはずです。以下に、主な省庁の新型コロナウイルス感染症関連ポータルサイトや、そこに掲載されている支援政策のまとめパンフレット等の所在を列挙します。なお、東京都および「Yahoo! Japan」のまとめサイトも見やすく利用しやすいので、紹介しておきます。

[内閣官房]新型コロナウイルス感染症対策>各種支援・行政の取り組み
[首相官邸]新型コロナウイルス感染症>ご利用ください・お役立ち情報

[厚生労働省]新型コロナウイルス感染症について>生活を支えるための支援のご案内
[経済産業省]新型コロナウイルス感染症関連>支援策パンフレット>新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

[総務省]新型コロナウイルス感染症>緊急経済対策関連>特別定額給付金
[消費者庁]新型コロナ関連消費者向け情報
[国土交通省]危機管理>新型コロナウイルス感染症に関する国土交通省の対応
[国税庁]新型コロナウイルス感染症に関する対応等について
[金融庁]新型コロナウイルス感染症関連情報>新型コロナウイルス感染症の影響による資金繰りやローンの返済等でお困りの皆様へ
[文部科学省]新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について>子供の学び応援サイト
[農林水産省]新型コロナウイルス感染症について>国民の皆様へ

[東京都]新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ

[Yahoo!JAPAN]くらし>新型コロナウイルス対策支援制度まとめ

 

何度でもポータルサイトを訪問する

新しい支援施策の成立、運用改善、解釈指針の策定などにより、ポータルサイトに掲載される情報やパンフレットは次々と更新・改版されていきます。したがって、具体的に制度を利用する場合には都度ポータルサイトを確認して、最新情報にアクセスすることが必要です。本稿の時点では、令和2年度予算、第一次補正予算、第二次補正予算が順次成立した後なので概ね支援制度は出揃っている状態ですが、「第2波」の状況如何によっては今後も変わっていく可能性があります。

厚生労働省作成のパンフレット「生活を支えるための支援のご案内」には、仕事、子ども、生活費に関する日常のくらしの相談窓口や、受けられる支援が網羅されています。見やすく、支援者による説明資料としても使いやすいものです。厚生労働省が所管する代表的な支援制度は「雇用調整助成金」「休業手当」「緊急小口融資」「生活保護」などです。だれもが一度は目を通しておくべき情報がパンフレットになっていることは心強いのではないでしょうか。これらも随時更新されているので最新版かどうかを常にチェックすることが求められます。

経済産業省のパンフレット「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」には、中小企業・個人事業主向けの助成金、融資などが網羅されています。売上減少に応じて支援される緊急経済政策の「持続化給付金」(中小企業最大200万円、個人事業主最大100万円)、家賃支援策である「家賃支援給付金」(中小企業最大600万円、個人事業主最大300万円)をはじめ、セーフティネット保証や経営相談窓口の情報なども漏れなく記述されています。事業主には必携必読のパンフレットといえますので、これらの情報も最新版かどうかを必ず確認していただきたいと思います。

最も重要なポータルサイトは、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室が運用するポータルサイトである「内閣官房新型コロナウイルス感染症対策」です。トップページには、大きく重要施策が一覧化されていますが、なかでも『新型コロナウイルス感染症に伴う各種支援のご案内』は、国が実施している支援策を網羅的にみやすくデザインし、更新頻度も高く情報の鮮度が常に保たれています。「世帯や個人の皆様」向けの支援策として「給付」「貸付」「猶予・減免」に分けて受けられる支援の類型ごとに支援制度を紹介しています。具体的には、次の支援制度が列挙されています(8月25日現在)。ただし、自治体や組織によってはすでに申請期間が経過しているものもあるので留意してください。

※リンク先は内閣官房が整理したものをそのまま掲載していますが、必ずしも制度への直リンクになっていない場合があります。

 

(給付)

■全国すべての人々に> 特別定額給付金

■子育て世帯の方々に> 子育て世帯への臨時特別給付金

■生活が苦しいひとり親世帯の方々に> ひとり親世帯への臨時特別給付金

■休業期間中、賃金が支払われない> 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金

■休業による収入減で住居を失うおそれ> 住居確保給付金

■アルバイト収入減で学業継続が難しい> 学生支援緊急給付金

 

(貸付)

■収入減で生活が苦しい> 緊急小口資金・総合支援資金

 

(猶予・減免)

■収入減で社会保険料が払えない> 国民健康保険料等の減免

■生活が苦しくて税・公共料金が払えない> 納税猶予・公共料金の支払猶予

 

中小企業・事業者向けの支援としては「給付」「助成」「貸付」「猶予・減免」に分けて列挙されています。具体的には以下の制度が列挙されています(8月25日時点)

※リンク先は内閣官房が整理したものをそのまま掲載していますが、必ずしも制度への直リンクになっていない場合があります。

 

(給付)
■売上半分以下・事業継続が苦しい> 持続化給付金

■家賃の支払いが苦しい> 家賃支援給付金
 
(助成)
■雇用を維持できない> 雇用調整助成金

■事業再開に向けた投資をしたい> 持続化補助金

(貸付)
■売上減で資金繰りが難しい> 実質無利子・無担保融資(日本政策金融公庫ほか)
 
(猶予・減免)
■売上減で税・社会保険料が苦しい> 国税・地方税・社会保険料の納付猶予
■売上減で固定資産税が払えない> 固定資産税・都市計画税の減免

 

専門家などの窓口に遠慮なく相談する

自力でウェブサイトをたどって情報検索するにしても、「給付」「融資」「減免」等の典型的な支援の種類の区分を意識しているかどうかや、当該制度の公式サイトやそれに準ずるサイトで、正確な説明をしているものなのかどうかを判別できるかなど、困難を伴うことが多いはずです。

そこで、専門家の相談窓口への相談をお勧めします。「お金とくらし」に関する話であれば、やはり弁護士会が実施している相談に連絡して、情報収集のあたりをつけていただくのがよいのではないでしょうか。あらゆる支援制度や予算措置も、法律や制度の裏付けが存在して成り立っています。法律の専門家であり、また自然災害などで被災者支援や災害復興支援の経験を有している弁護士の相談窓口での情報収集は、効果的な手段のひとつです。

日本弁護士連合会では「新型コロナウイルス対応関連情報」等の特設ページを設けており、個人および事業者の方の相談窓口の連絡先や相談事例のQ&Aを掲載しています。また各都道府県の弁護士会では、それぞれが新型コロナウイルス感染症対策の情報を随時発信しています。あわせてご覧いただければと思います。

 

次回予告

今回は、個人や事業者が利用できる法制度上の支援策を検索する際に役立つ視点をご紹介しました。次回は、その中でも特に、中小企業や小規模事業者の「事業継続」(BCP)に焦点を当て、生業を維持し経営を再建するための視点についてお話ししたいと思います。

 

ワンポイント・キーワード 被災したあなたを助けるお金とくらしの話

 

新型コロナウイルス感染症のまん延による生活危機や経済危機への具体的な支援策をみると、それらは大規災害における復興支援や生活再建支援の施策と類似していることわかります。同じ法律を根拠とできなくても、災害対策の具体的なメニューをヒントにすることで、新型コロナウイルス感染症に立ち向かう支援はどうあるべきかが見えてきます。そこで、「備蓄する本」として筆者が著した『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』の全体目次(全30話と2つのコラム)を紹介したいと思います。「はじめの一歩」「貴重品がなくなった」「支払いができない」「お金の支援」「トラブルの解決」「生活を取り戻す」「被災地の声を見る」という7つのカテゴリーと30話で構成されています。いま置かれている現状の認識、被災直後から不安になる貴重品の紛失などへの対応、時間とともに押し寄せるローンや各種支払いへの対応など、直接的な悩みを前半にまとめています。後半では、生活再建の一歩を踏み出せるよう、お金の支援、手続き関係の支援、新たな住まいを得るための支援などから重要なものをピックアップしています。

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